すき、のそのさき

君はきらきらひかる星

9代目青学を見送ったはなし

ドリームライブ2018終幕から半月経った。

あっという間だったなと思う反面、まだそれしか経っていないのかと驚く気持ちもある。大楽の日、5月20日は抜けるような青空で、等身大にきらきら輝いていた青9の門出にぴったりだねなんて言って朝から泣き笑いしていたことが懐かしい。

 

 

演じるものに愛情を持って寄り添ってくれる推しが好きだった。

立ち姿で、視線で、歌声で、私を夢中にさせる推しが好きだった。

推しが演じたのは決して劇中で愛想を振りまくタイプのキャラクターじゃないけれど、アンコールになるとやわらかい笑顔を浮かべて、劇場の隅々まで届くように何度も、いろんな方向に丁寧にお辞儀をしてくれるところも好きで、いつだって幸せだった。

 

大好きな推しが、大好きと言って憚らない、9代目青学のことも好きだった。

 

元々テニミュでは他校のオタクばかりやってきて、もちろん歴代青学のことも好きだったけれど、9代目青学のことはどこか特別に好きだった。歴代随一で歌が上手いとか、ダンスが上手いとか、そんなことは言わないし、言えないけれど。“現青学”から“9代目青学”と正式に呼称されるようになって幾日も経つのに、未だに青9の何にここまで惹かれたのか言葉にできないことが悔しくて、だけどどこか誇らしさすら感じる。

私にとって青9は、「きらきらしてる」なんて、そんな不確かで曖昧な表現がぴったりの集団だ。理屈をこねて理由を探している時間が勿体ないくらい、とにかく応援したくなる、彼らの背中を見つめていたくなる、その先に何があるのか知りたくなる。主人公が主人公であることに本当は理由なんて必要なくて、ただ素直に、彼らが青春学園のテニス部のレギュラーなんだと、そう思わざるを得ない存在。それが私の見た青9で、青9が放つ“きらきら”の意味だった。

 

青9がいつまでも“青学”として、再び立海に挑む夏が来るって、本気で思ってたわけじゃない。きっといつか卒業するだろう、彼らが過去になって、また新しい青学がその襷を受け取って走り出す日が来るだろう、それくらいきちんとわかっているつもりだった。

去年の秋に卒業が発表されたとき、あぁ大好きなあの試合もこの試合も青9で観ることはできないんだなぁって一人前に悲しんではいたけれど、今にして思えばあのときの私は半年も先のことだからとどこかふわふわと定まらない心でしか卒業を捉えていなかった。

でも、当たり前に時間は経つし、青9は“現青学”とは呼ばれなくなったし、推しは卒業した。

2月に迎えた最後の本公演千秋楽、チケットをご用意されていなかった私は地元の映画館でライブビューイングを観ながらぼろぼろに泣いていた。

ずっと弱音を吐かない、本当に強い、すごい、と周りに言われ続けていたリョーマが、最後の挨拶で初めて「怖い」と言った。みんなを見送って一人残り新しい仲間と戦い続ける彼が、みんなと一緒にいた当たり前がそうじゃなくなることが怖い、と。まだ17歳の少年がその小さな身体に背負うことになったものの大きさや重みを、私はそれまで多分なにもわかっていなかった。いや、きっと今だって本質的には理解できていないし、そもそも一介のオタクにはそんなの無理なんだけど。

だけど確かにあの夜、「怖い」という素直な感情の吐露によって初めて、彼が抱える不安の一端にほんの少しだけ触れることができたし、続く「みんなの背中を目に焼き付けたから後悔はないです」という言葉に救われた。寂しさと悲しさは似ているけれど違うものだから、悔いがないのならきっと、涙の理由は悲しみではないのだろうと思えた。

ドリライ最後の挨拶で、推しは今までのことをゆっくりと語った。いつもの彼とは少し違う、泣いたあとの子どもが一生懸命に感情を伝えてくれようとしているような、そんな挨拶。それから少しだけ振り向いて、横一列に並んだ青学の真ん中にいるリョーマに、「にちか、見ててくれてありがとう」と言った。涙を流して目を真っ赤にしてそれでも真っ直ぐに立つみんなの背中はすごく美しくて、愛しくて、この人達の姿を目に焼き付けて心に宿した越前リョーマはきっと誰よりも強い。“新青学”の真ん中でザ・レギュラーを歌う彼は頼もしかった。三ヶ月前、本公演の最後の最後で舞台の上でうずくまるほどに泣き崩れたリョーマは、もうどこにもいない。

 

すべてが終わってからTwitterやブログに載せられた推しの写真はどれも最高の笑顔を浮かべていて、それだけでもう、彼はこの現場で出会えた仲間たちみんなのことが本当に好きで、素敵な現場だったんだろうなと感じられたし、そんな空間を見守れていたことが嬉しかった。後悔はない、という一言が幸せで、晴れやかな笑顔が何よりの証拠だと思う。推しがくれる言葉はいつだって誠実で、やさしい温度がある。好きになってからずっとそう思ってきたけれど、卒業に際したそれらは格別に愛しかった。

私は推しがキャラクターとして立つ最後のステージで喋ってくれたことを一言一句すべて覚えていたいし、本音を言うならあのときの横浜アリーナの空気ごとまとめて手の中に置いておきたいし、一生大事にしたいのに、簡単に記憶は薄れていくから、そのことだけはどうしようもなく悲しい。あんなに泣いた夜は初めてだったし、浮かんできた気持ちが山程あったのに、言葉にならなかったそれらはいつか記憶の中で朧げになってしまう。

けれど、私の大好きな推しが、そして9代目青学のみんなが、あの日、世界で一番いとしくて、眩しいくらい「きらきら」していたことだけはきっとずっと覚えているだろう。いくら言葉を尽くしてもうまく綴れない、だけどそのおかげで、私はその景色を忘れずに済む。感性だけが記憶する強烈な煌めきは、いつまで経っても薄れないからだ。双眼鏡のレンズが切り取った小さな丸い世界の中に、大好きな12人がぎゅっと集まって、汗も涙もぜんぶが輝いていたことを、絶対に忘れてやるもんか、と思う。

 

 

テニミュにおける卒業は、いつでも喜ばしいものであってほしい。

私は当たり前に寂しいし、いっぱい泣くけれど、多くの俳優がこれをデビュー作とする上で、卒業は新しいスタートに他ならないからだ。晴れやかな気持ちでミュージカルテニスの王子様という作品から巣立っていってほしいし、私もそう思って手を振りたい。

 

9代目青学の皆さん、今まで本当にありがとうございました。

これから続くそれぞれの歩みが、幸せと喜びに満ちていますように。

 

そしてリョーマと、かわいい末っ子*1たち。絶対にみんなで全国制覇しような!

 

*1:部長の言葉。大楽でいきなり出てきてザ・レギュラーを歌われて正直パニック起こしてたけど、そんな風に言われたらもう愛すしかなかったよ。ありがとう。